大学勤務時代に共同研究させていただいた先生が、非常に興味深い研究についての神経内科医の先生のブログをシェアしていたので少し紹介させたいただきます。Cortexyme社というベンチャーがアルツハイマー病の原因が、P.gingivalisという歯周病原菌でこれをターゲットにアルツハイマーの治療ができるという論文を発表しました。（Dominy SS,et al.Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidense for disease causation and treatment with small-molecule inhibitors,Sci Adv.2019;5(1):eaau3333.）簡単に説明すると、歯周病の最も代表的な原因菌であるP.gingivalisという菌が歯茎から血中に入り、全身の血管を通じて老化によって脆弱化した脳血液関門（このおかげで健康であれば血管を通じて細菌は脳には達しないのです。）を通過して、脳内に到達し、そこでタンパク分解酵素（gingipain）を分泌することにより、アルツハイマーの神経障害を起こすというものでした。P.gingivalisが歯周病を起こす原因の一つがそのタンパク分解酵素というのは、大学の授業でも習うことですから、それが脳内で悪さをして、アルツハイマーの原因となるとは衝撃的な内容でした。以前から歯周病菌が血液を通じて全身に影響を及ぼす、脳内で膿瘍を作ったという論文は読んだことがあるのですが、こんなにメジャーな論文にアルツハイマーの原因であるという報告がされたということはかなりの根拠があるということだと思います。このベンチャーはP.gingivalisが分泌する酵素を阻害する薬をアルツハイマーの薬として開発しようという意図での報告ですが、何よりも歯周病を治療、予防することがアルツハイマーの大きな予防であるということがはっきりしてきました。このブログの中での述べられているように、胃がんがピロリ菌と関連しているという報告以来の衝撃であるいうのがこの報告の凄さでしょう。